8年総額1億6,320万ドル。年平均2,040万ドルはNHL史上最高額である。

新しい契約が始まるのは28歳。コロラドが買ったのは、過去の実績だけではない。マカーのピークと、その先の劣化や怪我のリスクもある。

コロラド・アバランチのケイル・マカーが、8年総額1億6,320万ドルの契約延長にサインした。年平均額(AAV)と固定キャップヒットは2,040万ドル。NHL史上初めて2,000万ドルを超え、マックリン・セレブリーニの1,880万ドルを上回った。

1ドル=約160円で換算すると、年平均約32億6,000万円、総額約261億1,000万円になる。

年平均額をレギュラーシーズン82試合で割ると、1試合あたり約3,980万円。もちろん欠場しても契約額が試合数に応じて減るわけではなく、金額の大きさをつかむための単純換算である。

一般には「年俸」と表現されるが、チーム編成で重要なのは実際に受け取る現金給与ではなく、サラリーキャップに毎年計上される固定キャップだ。マカーの新しい固定キャップは、2027-28シーズンから8年間、毎年2,040万ドルとなる。

今季8.65%、来季17.97%

NHLには、各チームが選手契約へ使える「サラリーキャップ・チームの給料上限」がある。全チームが同じ大きさの財布を渡され、その中で約23人の選手を揃える仕組み、と考えれば分かりやすい。

マカーの今季の固定キャップヒットは900万ドル。2026-27シーズンのチーム上限1億400万ドルに対して、8.65%である。

新契約が始まる2027-28シーズンは、チーム上限1億1,350万ドルに対して17.97%。マカー1人で、チーム全体の財布の約18%、ほぼ5分の1を使う。(エースのマッキノンもいる中で……)

シーズンマカーの固定キャップヒット日本円の目安チーム上限に占める割合
2026-27900万ドル約14億4,000万円8.65%
2027-282,040万ドル約32億6,000万円17.97%

1年で1,140万ドル、約18億2,000万円増える。固定キャップヒットは約2.27倍だ。

ただし、この差額が今季の空き枠として残っているわけではない。PuckPediaによると、2026-27のコロラドのProjected Cap Spaceは現時点で約40万ドル、日本円で約6,500万円しかない。

つまり、割安分は貯金ではなく、すでに今季のロースターへ使われている。マカーを上限の8.65%で保持できるからこそ、ほかの主力やデプスへキャップを配分できた。 これがコロラドにとっての「最後の割安シーズン」である。

なぜ、DFがNHL最高額なのか

根拠は、得点だけではない。

マカーはレギュラーシーズン470試合で507ポイント。1試合平均は1.08ポイントで、キャリア平均1ポイント以上を記録しているDFは、NHL史上でボビー・オア、ポール・コフィー、マカーの3人しかいない。

プレーオフでも90試合90ポイント。2022年には20試合で29ポイントを記録し、スタンレーカップ、プレーオフMVPのコン・スマイス・トロフィー、最優秀DFのノリス・トロフィーを同じシーズンに獲得した。

主な実績を並べると、契約額の根拠が見える。

圧倒的なオフェンシブDFの地位。

2025-26のレギュラーシーズンは時速20マイル以上のスピードバーストを223回記録し、DFで2位。2026年プレーオフの最高速度は時速23.92マイルで、全選手1位だった。

2024-25シーズンにDFトップの時速20マイル以上のバースト200回、オフェンシブゾーン滞在率45.5%、5対5のショットアテンプト差プラス334を記録していた。速いだけではない。

自陣からパックを前へ運び、ブルーライン上で横に相手を動かし、攻撃を創出しながら、さらに相手の攻撃も止める。

ケイル・マカーとデボン・トウズの2025-26シーズン公式ハイライト 2025-26シーズン公式ハイライト
Colorado Avalanche ↗
ケイル・マカーの契約後フルインタビュー 契約後のフルインタビュー
Colorado Avalanche公式 ↗

新契約は、キャリアのピークから始まる

マカーは1998年10月30日生まれ。2027-28シーズンの開幕時は28歳で、新契約は36歳で満了する。

NHL選手の年齢と成績を分析した2014年の研究では、DFの得点面のピークは28〜29歳、ピークに近い水準を維持する期間は24〜34歳と推定された。もちろん、全選手が同じ曲線を描くわけではなく、この研究が測っているのは主に得点パフォーマンスである。

それでも契約の構造は分かりやすい。

年齢契約上の意味
28〜29歳研究上の得点ピークと、新契約の開始が重なる
30〜34歳ピークに近い水準を期待できる期間
35〜36歳加齢、負傷、スピード低下のリスクが大きくなる終盤

\最初の数年は、マカーのキャリアで最も価値が高い可能性のある時間を確保した。 一方で、8年間すべてにノームーブメント条項が付くため、終盤に成績が落ちても契約を動かしにくい。リスクは必ずある。\\私個人としては、怪我がなければ32歳までは現状と同じパフォーマンスが出るのではないかと思っている。パック1個分、ブレード1枚分のズレで大きく結果が左右するNHLで脳から身体への神経伝達のラグが出てくるのは人間として避けることの出来ない宿命である。

高すぎるのか?

単純に「2,040万ドルは高すぎる」とは言えない。マカーは、得点、パックキャリー、ゲームメイク、長い出場時間、プレーオフでの再現性を1人で担う。トップクラスのFWとトップペアDFを別々に揃える代わりに、その複数の役割を1人へ集約できる選手である。

問題は、マカーが金額に値するかではない。残り約82%のキャップで、コロラドがどれだけ強い22人を揃えられるかだ。

私は、ここに注目している。

ホッケーは一人、二人ではできない。たとえ、同じパワープレー・ユニットにマッキノンがいたとしても。

PuckPediaの現時点の2027-28見込みでは、アクティブロースター18人に対してProjected Cap Spaceは約1,164万6,000ドル、日本円で約18億6,300万円。残り5枠を埋めると仮定すれば、単純平均は1枠約233万ドル、約3億7,300万円となる。ロースターは今後変わるため確定値ではないが、最高額契約の重さはここに表れる。

前半はピークを買う。後半は加齢による劣化のリスクがある。そして、その8年間を支える安いスター候補の若手とデプスを見つけ続ける。

マカーの2,040万ドルは、1人の評価額であると同時に、コロラドのGMのチーム編成に対するビジョンへ注目が集まる。

※契約額、成績、ロースターは2026年8月30日時点。2026年8月28日の1ドル=約160円で概算。2027-28の上限見込みは小幅調整の可能性があり、Projected Cap Spaceとロースター人数も変動する。