2010年NHLドラフト。ボストン・ブルーインズが1巡目全体2位で指名した。ルーキー年にスタンレーカップを獲得。トレード移籍したダラス移籍1年目には84ポイント。その後、自己最多40ゴールまで到達した。

そのタイラー・セギンが、2年連続で大怪我を負った。34歳になる。

得点力は残っている。シーズンを通して氷に立てるコンディションか。

2026年9月1日、ダラス・スターズは1本のポストを公開した。右膝のACL手術から約9か月。34歳のセギンが、チームメートと再び氷に乗っていた。

「セギンが氷に戻った」。復帰へ向けた一歩である。しかし、試合に戻ったわけではない。2026-27シーズンは8年契約の最終年。翌夏には無制限FAになる。

これは単なる怪我からの復帰ではない。セギンが、NHL選手として次の契約を得られるかを懸けた1年になる。

NHLドラフト全体2位、カップ獲得。ダラス攻撃の中心へ

タイラー・セギンは1992年1月31日、カナダ・オンタリオ州ブランプトン生まれ。2010年ドラフトで、テイラー・ホール(現カロライナ・ハリケーンズ)に次ぐ1巡目全体2位でボストン・ブルーインズに指名された。

ルーキーシーズンの2011年、ボストンでスタンレーカップを獲得した。イースタンカンファレンス決勝第2戦では2ゴール2アシスト。ティーンエージャーがプレーオフ1試合で4ポイントを記録したのは、1989年のトレバー・リンデン以来の快挙だった。

ただし、ボストンで順調にスターへ育ったわけではない。

2013年、21歳でダラスへトレードされた。ダラスが獲得したのはセギン、リッチ・ペヴァリー、ライアン・バトン。ボストンへ渡った主な選手はルイ・エリクソン、ライリー・スミス、ジョー・モロー、マット・フレイザーだった。

当時のセギンには、「遊び好きな問題児」というイメージが付きまとった。

2011年にはチーム朝食とミーティングへの遅刻を繰り返し、ヘルシースクラッチ。2013年のトレード前には、球団内部でも成熟度、競争姿勢、オフアイスの問題が議論された。

ただし、「練習嫌いだった」「夜遊びだけで放出された」と断定できる資料はない。

2013年のプレーオフは22試合1ゴール。翌季から年平均575万ドルの契約が始まる一方、ボストンでは🇨🇦#37 パトリス・ベルジェロンと🇨🇿#46デイビッド・クレイチーがCFを務め、セギンはRWや3rdラインでの起用も多かった。規律、成績、役割、キャップが重なったトレードだった。

ダラス・スターズのタイラー・セギン 全体2位、カップ、トレード、1,000試合
セギン本人がキャリアの転機を振り返る|NHL公式 ↗

ダラスへ環境が変わると、得点は跳ね上がった。

移籍初年度の2013-14シーズンは80試合37ゴール47アシスト、84ポイント。リーグ全体で4位のポイントだった。🇨🇦#14ジェイミー・ベンとのコンビは、ダラスの攻撃の中心になった。

2017-18シーズンには自己最多の40ゴール。当時の契約延長発表によれば、ダラス移籍後の5シーズンで173ゴールを挙げ、同期間のNHLでは🇷🇺オベチキンに次ぐ2位タイだった。

NHL公式映像。全盛期のセギンは、速いトランジションからフィニッシュへ入り、ワンタイマー、リストショット、ゴール前と複数の形で得点できた。

何が特別だったのか。40ゴールだけではない

全盛期のセギンが評価された理由は、一つの武器ではない。ライトハンドCFとして、複数の重要な役割を同時に埋められたことにある。

2017-18シーズンNHLでの位置チームにもたらした価値
40ゴール7位タイ5対5、PP、速攻のすべてでフィニッシュできる
335ショット2位自分でシュートまで運び、オフェンスの起点を作れる
PP14ゴール6位タイライトハンドのワンタイマーでPPのフィニッシャーになれる
フェイスオフ勝率54.9%790勝CFとしてポゼッションのスタートを作れる
平均出場時間20分55秒FWで7位PPだけでなく、5対5とPKにも出られる
82試合出場2季連続高いプレッシャーをかけてもラインアップから消えない

速い選手、シュートが強い選手、フェイスオフに強い選手はほかにもいる。セギンはライトハンドでCFとRWを動けるうえ、PPではワンタイマー、2017-18シーズンにはPKも担当した。それらを一人で成立させられたことが、985万ドルの評価につながった。

数字は落ちた。しかし、得点感覚は消えていない

セギンはNHL通算1,016試合で367ゴール459アシスト、826ポイント。プレーオフでも151試合79ポイントを残している。

一方で、キャリア後半は怪我との戦いが続いている。

2020年には右股関節と関節唇の手術を受け、2020-21シーズンは3試合しか出場できなかった。2024年には反対側の左股関節を手術。そして復帰した翌シーズン、右膝のACL(前十字靭帯)を断裂した。

以下はレギュラーシーズンの全記録。BOSはボストン、DALはダラス。GPは出場試合数、Gはゴール、Aはアシスト、Pは合計ポイントを表す。

シーズン所属GPG–A–Pキャリアの変化
2010-11BOS7411–11–2218歳でNHLデビュー。ルーキー年にカップ獲得
2011-12BOS8129–38–672年目でチーム最多67ポイント
2012-13BOS4816–16–32ロックアウト短縮シーズン。プレーオフ22試合1ゴール
2013-14DAL8037–47–84移籍1年目。チーム最多、NHL4位のポイント
2014-15DAL7137–40–772季連続37ゴール。得点力を定着させる
2015-16DAL7233–40–733季連続70ポイント超
2016-17DAL8226–46–72初の全82試合出場。4季連続70ポイント超
2017-18DAL8240–38–78自己最多40ゴール。PP、PK、フェイスオフも担う
2018-19DAL8233–47–80自己2位の80ポイント。3季連続全試合出場
2019-20DAL6917–33–50右股関節を痛めたままカップファイナルまでプレー
2020-21DAL32–0–2右股関節と膝の手術後、最終盤の3試合だけ復帰
2021-22DAL8124–25–49ほぼフルシーズンへ復帰。役割を作り直す
2022-23DAL7621–29–5021ゴール。ツーウェイのCFとして対応
2023-24DAL6825–27–5225ゴール。トップライン以外でも得点を継続
2024-25DAL209–12–21左股関節唇とFAIの手術。最終戦とプレーオフに復帰
2025-26DAL277–10–1712月2日に右膝ACL断裂。以後全休
通算1,016367–459–82616シーズン、1,000試合と367ゴールに到達

ここで重要なのは、出場していた時の得点効率である。

2024-25シーズンは手術前の19試合で9ゴール11アシスト、20ポイント。

シュート決定率は約20%だった。

レギュラーシーズン最終戦に復帰して1アシストを加え、通算20試合21ポイント。

プレーオフでも18試合4ゴール4アシストを記録した。

翌2025-26シーズンも、離脱前の27試合で7ゴール10アシスト。シュート31本で7ゴール、決定率22.6%だった。キャリア通算の11.3%と比べると約2倍である。

直近2シーズンを合わせると47試合16ゴール38ポイント。82試合換算では約28ゴール66ポイントになる。

ダラスGMのジム・ニルも、離脱前のオールラウンドなプレーを、自身がダラスに来て以降で最も良かった可能性があると評価した。

もちろん、少ない試合数の高い決定率が長期的に続く保証はない。ただ、怪我の前から得点能力が失われていたわけではない。セギンのキャリアを止めているのは、怪我との戦いだ。

2年連続、12月にシーズンが止まった

2024年12月5日、セギンは左側のFAIと股関節唇を修復する手術を受けた。復帰まで4〜6か月。12月1日の試合を最後に58試合を欠場し、4月16日のレギュラーシーズン最終戦で戻った。

その約8か月後、またシーズンが止まった。

2025年12月2日のニューヨーク・レンジャース戦。第1ピリオド1分44秒、わずか2シフトで退場した。右膝ACL断裂。12月16日に手術を受けた。

2026年2月27日、ダラスはセギンがレギュラーシーズンとプレーオフの残りを欠場する書類を提出した。これにより、チームは985万ドルのキャップヒットについてフルのリリーフを得られる状態になった。

これは給与が消えるという意味ではない。LTIRの仕組みにより、ダラスが上限を超えて代替戦力を組める幅が生まれるということだ。そしてフルリリーフを得るには、プレーオフを含めて復帰させないことを明確にする必要があった。

2年連続で、好調なスタートが12月の手術で終わった。怪我は偶然でも、GMがロースターを作る時には「また起きるかもしれないリスク」として扱われる。

身体が動かなくなって、好きだったものに気づいた

全体2位指名、19歳でカップ、ダラス移籍1年目にチーム最多84ポイント。その身体が初めて思うように動かなくなったのが、2020年の右股関節手術だった。

手術後は右脚の神経にも影響が出て、大腿四頭筋(太もも)が目に見えて細くなった。ベッドから起き上がれず、車椅子から松葉杖へ進み、ジム、鍼治療、自宅でのリハビリを毎日繰り返した。進歩は小さく、少し負荷を上げると後退する。本人は、もう一度NHLでプレーできるのかを考えたという。

復帰後、セギンは長期離脱によって、この競技をどれほど愛しているのかを以前より理解したと振り返った。若い頃に問われたのはプロ意識。30代では、思うように動かない身体で、もう一度プレーするための地道なリハビリを続けている。

8年総額7,880万ドルを得ても、金だけでは氷に戻れない。失いかけて初めて分かった「チームメートと共にGAMEを愛する体験」が、現在のセギンを動かしている。

985万ドル契約の最終年

セギンは2018年9月、ダラスと8年総額7,880万ドルの契約延長を結んだ。年平均と固定キャップヒットは985万ドル。日本円を1ドル=約160円で換算すると、年約15億8,000万円、総額約126億円である。

2026-27金額・割合何を意味するか
セギンの固定キャップヒット985万ドル約15億8,000万円
NHLのチーム年俸上限1億400万ドル約166億4,000万円
上限に占める割合約9.5%約23人で分ける枠のほぼ10分の1
契約状況8年目/最終年2027年7月に無制限FA

健康で得点できるセギンなら、CFとRWをこなし、トップ6のフィニッシュ、フェイスオフ、PP2、ベテランのリーダーシップを一人で埋められる。

しかし、出場できなければキャップの約9.5%が止まる。シーズン途中でLTIRへ移せても、開幕時の編成、復帰時期、トレード期限の判断は難しくなる。契約最終年のセギンは、得点力と同時に健康状態までロースターへ影響を与える。

ライネと似ている。しかし、同じではない

パトリック・ライネと重なるのは、シュート能力が残っているのに、怪我で市場から消える危険性がある。

セギンはカップを獲り、1,000試合に出場し、367ゴールを決めた。若い頃に期待された未来の多くを、すでに実績へ変えている。

セギンはCFも出来る。PKも出るレベルで、スペシャルもある中で、マルチに使える幅がある。

今回問われるのは「スターになれるか」ではなく、スターだった選手が、優勝を狙うチームで次の役割を作れるかである。

9月、セギンは氷に戻った。トレーニングキャンプに間に合う可能性もある。ただし、復帰日はまだ確定していない。

34歳。ACL手術明け。985万ドル契約の最終年。

得点力が残っていることは、直近2シーズンの数字が示している。次に証明しなければならないのは、シーズンを通してその活躍ができるか。

LOVE THE GAME. 再び活躍する姿を私は見たい。

※成績、契約、復帰状況は2026年9月4日時点。日本円は1ドル=約160円で概算。シュート決定率は少ない出場試合による変動が大きく、将来の得点ペースを保証する数字ではない。