AIに「記事サイトを作って」と言えば、形あるものは出てくる。
では、人間は何を決めているのか。
2026年8月18日、NHLの記事を発信するメディアをゼロから立ち上げた。半日で、記事一覧・記事ページ・アイキャッチの自動生成・SNSへの導線まで通し、1本目を公開した。追加の固定費は¥0。
作業のほとんどはAIがやった。だが、決定的な分岐はすべて人間が決めている。その境界を、そのまま記録に残す。
最初の分岐——noteか、自社ドメインか
記事の置き場所は2択だった。noteに書くか、自社ドメイン(bonkalinkolo.jp)に置くか。
試算すると、月額はどちらも¥0だった。noteは無料プランで足り、自社ドメインもCloudflare Pagesの無料枠に収まる。既にドメインは支払い済みで、静的サイトの配信は帯域無制限。金額で差はつかない。
差がついたのは4点だった。
| 観点 | note | 自社ドメイン |
|---|---|---|
| ドメイン評価の蓄積先 | note.com | 自分のドメイン |
| AIに引用されるときの名前 | 「noteの記事」 | 「bonkalinkolo.jp」 |
| 商品への導線 | 外部リンクで離脱 | 同一ドメイン内で完結 |
| 集客力 | あり(note内レコメンド) | なし(SNSから流す) |
noteが明確に勝っているのは最後の1点、集客力だ。だがその集客が連れてくるのは「広く浅い層」で、こちらが届けたい層とは違った。過去1年分のSNS実データを見ると、反応の深さ(保存される率)が高いのはインプレッションの低い専門的な投稿のほうだった。数字が大きい投稿と、刺さっている投稿は別だった。
つまりnoteの唯一の強みが、この用途では効かない。だから自社ドメインを選んだ。金額ではなく、誰に届けたいかで決まった。
AIがやったこと、人間が決めたこと
半日の作業を分解すると、こうなる。
| 担当 | |
|---|---|
| HTML・CSSの実装 | AI |
| アイキャッチ生成スクリプトの作成 | AI |
| 構造化データ・計測タグの設置 | AI |
| ブラウザでの表示確認・不具合の発見 | AI |
| 公開先の選定(note か 自社か) | 人間 |
| コーナー名・見せ方の決定 | 人間 |
| 記事冒頭をどう書き出すか | 人間(AIが3案出し、人間が選ぶ) |
| 公開するかどうか | 人間 |
境界は明快だった。AIは「作れる」が、「どれがいいか」は決められない。
記事の書き出しがわかりやすい例だった。最初にAIが書いた冒頭は、契約金額を淡々と述べるニュース記事調で、読み進める理由がなかった。3つの案を出させ、そのうち「読者に問いを投げる」型を選んだ。選んだのは人間で、選択肢を並べたのはAIだ。どちらが欠けても、あの冒頭にはならなかった。
詰まった7点
順調に見えるが、実際は途中で何度も止まっている。全部書く。
| 詰まった事象 | 原因 |
|---|---|
| SNS埋め込みが真っ白で消える | スクリプト読み込み失敗時の代替表示が無かった |
| アイキャッチの国旗が「□□」になる | 使ったフォントが絵文字を持っていない |
| 縦長画像で文字が画面外へ飛び出す | 下部テキストだけ折り返し処理が抜けていた |
| 見出しの左端が切れる | 斜体の変形の起点が下側で、上の行ほど左へずれていた |
| Xでアイキャッチが表示されない | サーバー側は正常。X側が古いカード情報を保持していた |
| Xの検証ツールが動かない | すでに廃止されていた(ログイン画面に飛ばされるだけ) |
| 公開しても本番に反映されない | 配信網のキャッシュ遅延。十数秒待てば反映されていた |
このうち5つは、AIが自分でブラウザを開いて確認する過程で見つけた。人間が「見た目がおかしい」と指摘して直したのは残り2つだけだ。
逆に言えば、AIに作らせただけで確認しなければ、7つ全部が公開されていた。空白の埋め込み、豆腐文字、画面外へ飛んだ文字を抱えたまま。
Instagramだけは、技術では解決しなかった
最後まで残った問題がひとつある。Instagramにリンクを貼っても、アイキャッチが出ない。
最初は自分の設定ミスを疑った。だが調べると、これはInstagramの仕様だった。IGはリンクのプレビューカードを表示しない。キャプション内のリンクはクリックすらできない。noteに変えても同じで、どうやっても出ない。
XとThreadsではカードが正常に出る。出ないのはIGだけだ。
だから発想を変えた。IGではアイキャッチ画像そのものを投稿する。カードが出ないなら、画像を主役にすればいい。生成スクリプトを縦長サイズにも対応させ、ストーリー用の画像を出力するようにした。
技術で殴れない壁は、設計で回り込む。ここもAIは「Instagramの仕様です」と事実を出すところまでで、回り方を決めたのは人間だった。
半日でできたこと
- 記事一覧・記事ページ・タグ絞り込み
- アイキャッチ3種の自動生成(横長2案+縦長1案)をコマンド1発で
- アクセス解析・ヒートマップ・構造化データの設置
- トップページの圧縮(全画面4セクション → 2セクション)
- 記事1本の公開とSNSへの拡散導線
追加の固定費は¥0。人間が使った時間は、選ぶことと決めることに集中していた。
AIが速いのは事実だ。ただ、速さがそのまま質になるわけではない。速く作れるようになったぶん、何を作らないかを決める時間の価値が上がった。半日でわかったのは、たぶんそういうことだった。